2011年スイス2大時計フェアレポート ジュネーブサロン編2011/08/26 15:10

今年の入場者は1万2000人

(これは2011年の1月、3月に開催されたスイス時計フェアに関するファッション業界誌「WWD Japan(ウイメンズ・ウエア・デイリー・ジャパン INFASパブリケーションズ発行)」掲載記事のベースとなった取材ノートの一部です。詳細をお読みになりたい方は同誌の5/16号 VOL.1633の「時計特集2011 スイス2大時計フェア:S.I.H.H. & BASELWORLD 総括『ルイ・ヴィトン』の“本気”は脅威になるか」をご購入ください)

欧米市場も上向き、中国市場は期待以上の成長。未来への活気と自信が見えた2011年国際高級時計展(S.I.H.H)

 今年第21回目を迎えた、世界の高級時計のトレンドをリードする時計フェアS.I.H.H.(ジュネーブサロン)は会場全体に、ここ数十年で最悪の不況をついに脱したという喜びと落ち着き、未来への自信がみなぎっていた。  売り上げの内訳は非公開だが、特に時計や宝飾品が好調とのことで、現地通貨建てでの売り上げは21億700万ユーロ(約2440億1200万円 1ユーロ=115円として換算)で第2四半期と比較して約23%もの成長となった。このまま順調に推移すれば、2010年度の売り上げはリーマンショック前の2007年を超える可能性もある。そしてこの劇的回復の牽引車が中国を中心にしたアジア・パシフィック市場。伸び率は実にプラス約42%と順調に回復中のヨーロッパやアメリカでの伸び率の2倍以上。残念なことに日本だけがプラス3%と低く、苦しい状況が続いている。当然のことだが、全世界から集まったメゾン関係者やバイヤーたちの表情は明るく、昨年同様にハイジュエリーウォッチの新作コレクションや革新的なメカニズムを持つムーブメントやそれを搭載した新製品が各メゾンから続々と登場した。ただ新製品のトレンドや中身も昨年同様、ではない。デザインも品質も価格設定も、昨年とはかなり違う。まず、ブランドや価格を問わず製品の品質がさらに一段と向上した。そして最も注目すべき点は、デザインが「さらにクラシックに」、価格が「さらにアフォーダブル(手頃価格)に」なっていることである。具体的には、見た目のインパクト重視で大きく分厚くなったケースサイズや奇を衒ったデザインはほとんど姿を消し、スタイルも過去の傑作のエッセンスを継承・発展させた、メゾンの名がひと目で分かる飽きのこないものになった。 なかでも最も注目すべき存在は、このフェアの盟主「カルティエ」。本領であるハイジュエリー、アートウォッチ、レディスウォッチに加えて、3年目に突入した完全自社開発製造(マニュファクチュール)ムーブメントを使った複雑時計コレクションは圧巻だった。カルティエがあらゆる意味でスイス時計界の頂点を究める日は近い。

仕事モード全開になりました!2011/08/26 15:47

これまでブログは開店休業状態でしたが、心を入れ替えて、今後はブログを最低でも2、3日おきに更新し、仕事についても積極的にご報告することにしました。まず手始めに、今年1月に取材したスイス2大時計フェアのひとつ、ジュネーブサロンのレポートの一部をご覧ください。 引き続き、もうひとつの時計フェア・バーゼルワールド(バーゼルフェア)レポート、さらに2大フェアを総括した2011年スイス時計フェア総合分析レポート、それぞれの一部を公開します。よろしければご覧ください。 また時計以外の仕事や、現在行っている取材なども、ブログで積極的にご報告します。 なお、仕事依頼もお待ちしています。yasuhito.shibuya@gmail.comまでご連絡ください。遅くともⅠ日以内にご連絡差し上げます。

2011年スイス2大時計フェアレポート バーゼルフェア編2011/08/28 06:21

何故か鉄骨のフレームが!

(これは2011年の1月、3月に開催されたスイス時計フェアに関するファッション業界誌「WWD Japan(ウイメンズ・ウエア・デイリー・ジャパン INFASパブリケーションズ発行)」掲載記事のベースとなった取材ノートの一部です。詳細をお読みになりたい方は同誌の5/16号 VOL.1633の「時計特集2011 スイス2大時計フェア:S.I.H.H. & BASELWORLD 総括『ルイ・ヴィトン』の“本気”は脅威になるか」をバックナンバーでご購入ください)

リーマンショック前の好景気再び! 落ち着きと自信を取り戻したスイス時計業界

フェアに先駆けて3月9日にスイス時計協会(FH)が発表した2010年のスイス時計産業の総輸出額は、前年比プラス22.1%の約162億スイスフラン(約1兆4,580億円※1スイスフラン=90円換算)。第4四半期にリーマンショックに見舞われながらも過去最高を記録した2008年の約170億スイスフラン(約1兆5,300億円)には及ばないものの、2007年の約160億スイスフラン(約1兆4,400億円)を記録した。不況から一転、好景気に突入したといっていい。この数字の通りに各国からの来場者で賑わい、関係者の表情や話しぶりには未来への自信が溢れていた。  印象的だったのは、取材した時計メーカーのCEOやプロダクトマネージャーが好景気なのに、今後の見通しに非常に慎重だったこと。急成長が続き業績好調の牽引車である中国市場への期待も控え目な発言の人が多かったこと。また、名門、老舗を問わず多くのウォッチブランドの新製品に過去の名作をデザインモチーフにしたレトロなデザインで、リーズナブルな価格で高品質なものが多かったこと。 ところで、今年の最大のトレンドは「クラシック=伝統的」を超えた「ニューエイジ・レトロ=新複古調」。具体的には、目の肥えた時計愛好家の間でスイスの機械式時計の黄金時代と言われる1950年代から60年代前後のものをデザインの基本モチーフに、現代的なリファインを施したモデルだ。復古調のモデルは1990年代に世界的な機械式時計ブームが起きて以来毎年のように作られてきたが、そのほとんどはコレクター向けに企画されたものだった。ところが今年のバーゼルフェアでは、復古調のモデルがコレクターではなく明らかに一般の消費者をターゲットに登場している。コレクター向けの場合は少々クセがあるデザイン、メカニズムが売りだったが、今年の復古調はシンプルな中3針モデルやクロノグラフが中心になっている。その上、価格設定も非常に良心的。しかもディテールの完成度や仕上げも抜群だ。  こうした商品企画が主流になった理由を開発担当者に尋ねると、世界的に消費者の「時計を見る目」が肥えたためだという答えが返ってきた。今は、ブランドならではの腕時計であることが大事。ブランドはブランドらしくしないと消費者に選んでもらえない。その方向を追求すると、過去の引き出しを開けて名作に学ぶことになる。すると新製品は必然的にレトロテイストなデザインになるのだという。確かに今、高級腕時計、特に機械式のモデルに人々が求めているのは「未来的」であることよりも「古き良き過去を彷彿させるもの」「時代を超えても愛せるもの」であることなのは間違いない。その結果がこの「ニューエイジ・レトロ」ブームなのだろう。とはいえ今年の新作モデルは「ニューエイジ・レトロ」なものばかりではない。シリコン素材のヒゲゼンマイやアンクルを使ったコーアクシャル脱進機を採用する新世代のクロノグラフムーブメントを搭載し、4年の品質保証を付けたオメガの新作ダイバーズや、機械式で1/1000秒計測を実現したタグ・ホイヤーのコンセプトモデル、これまでにないメカニズムの複雑機構の開発など、技術的な革新や挑戦もますます盛ん。そしてこうした先進的なモデルでも、価格設定は今や、びっくりするぐらいに良心的だ。これは文句なく歓迎である。 なお、今年のバーゼルフェアで最大のトピックは、世界トップのラグジュアリーブランド「ルイ・ヴィトン」の正式出展。その本気ぶりはプレスリリースの「時計業界で確固たる地位を占める」という文言と、初のミニッツリピーターモデルを始め、かつてない数の新作モデルが物語る。フェア直前に事実上の買収が決定したブルガリも含め、同グループが時計界でスウォッチ、リシュモンと肩を並べる存在になる日は近い。

この週末、高円寺は阿波踊り!2011/08/28 06:39

舞台で見ると、踊りや音曲がよくわかります。

この土日、高円寺は阿波踊り一色になる。今年は「座・高円寺」で踊り開催前に行われたパブリックビューイング(有料)を見に行った。解説付きで席に座って見るのは、ウチのような乳幼児の居る家庭にはオススメ。通りで見ようとしても、ベビーカーでは踊りに近づけないから。その後、街へ出て賑やかな雰囲気を楽しんだ。商店街はお祭り状態で、屋台もいっぱい出るからだ。ただ、節電という理由で開催時間が昼間になって、気分はいまひとつ。娘が「音がうるさい」ってぼやいておりました。

2011年スイス2大時計フェアレポート総括 トレンド編2011/08/31 16:31

グッチの「クーペ」。こんなレトロモデルも出てきました。

(これは2011年の1月、3月に開催されたスイス時計フェアに関するファッション業界誌「WWD Japan(ウイメンズ・ウエア・デイリー・ジャパン INFASパブリケーションズ発行)」掲載記事のベースとなった取材ノートの一部です。詳細をお読みになりたい方は同誌の5/16号 VOL.1633の「時計特集2011 スイス2大時計フェア:S.I.H.H. & BASELWORLD 総括『ルイ・ヴィトン』の“本気”は脅威になるか」をバックナンバーでご購入ください)

今年の時計界のトレンドは(1)ニューエイジ・レトロ(2)薄型シンプル(3)アフォーダブル&リーズナブルの3つだ。

1月のジュネーブサロン、3月のバーゼルフェアを通じて今年の新作腕時計に共通するトレンドは、ひとことで言えば「スイス時計の黄金時代・再発見」。具体的にはスイス製の機械式腕時計が技術力でもスタイルでも世界を席巻した1950年代のスタイルを、現代的な感覚で懐かしめにリファインしたというもの。また良心的な価格設定も大きなトレンドだ。

01 ニューエイジ・レトロ) 1950年代スタイルの再発見

 スイス2大時計フェアで今年、最も目立ったトレンドは、“見た目のインパクトよりもバランスの取れた美しさ”が印象的な1950年代に製造されたアンティークモデルをモチーフにした「レトロテイスト」なデザイン。過去の傑作のエッセンスを抽出して生まれた「控え目で上品」なキャラクターが、アンティークを知らない人にも、音楽のオールディーズのように「懐かしいけれど、好ましい」と感じさせさせる。

02 薄型&シンプル

薄型シンプルウォッチの再評価

 薄型で針が2本、ないし3本で機能もデザインもミニマムなモデルはこれまで、一部の時計愛好家にしか評価されないものだった。だがここ数年、クラシックなこの種のモデルの素晴らしさに気付く人が増え、秘かなトレンドに。そして今年は老舗&頂点ブランドが、この種の新作を“看板モデル”として発表している。

03 アフォーダブル&リーズナブル)

消費者もビックリの“お手頃価格”

 2008年までのスイス時計界は明らかにバブル。その何よりの証拠が、同じ内容のモデルでも毎年、パーツ等の価格高騰を理由に値上げされた。しかし2009年以降、状況は大きく変わった。  できるだけ消費者がアクセスしやすいお手頃価格のモデル、同じ価格でもスペックアップを図り実質的な値下げとも思えるモデルを各社が用意するようになった。そして今年、消費者にとってうれしいことに、その傾向はさらに強まった。30万円前後で魅力的なものが出てきたのはうれしい。